痴の巨人、読書感想文を書く

病がかった「知」性が加速する読書備忘録

痴の巨人、バルザックを読む⑦~娼婦の栄光と悲惨 悪党ヴォ―トラン最後の変身~

1.経緯

 幻滅の続編であるため。

 

2.内容

 文学青年のパリにおける挑戦と死。

 

 

 

 

 

3.名フレーズ

奇妙なことに、ほとんどすべての行動的人間は前世から定まった「宿命」に従うのであり、同じように大多数の思索家は、思いがけない僥倖である「神慮」に従う。 p101

 ・宿命論者が行動的人間というのは面白い。宿命に従うならば、行動を積極的に起こす必要があるか疑問になるだろう。しかし、ここでいう宿命とは、消極的なものではなく、行動に伴う結果それ自体が宿命によって決定づけられるにすぎないということなのだろう。この点、サザンの次の指摘が妥当する。

たぶん本当の未来なんて知りたくないとアナタは言う (マンピーのG★SPOT桑田佳祐

 これは宿命論を前提にしつつも、それがわかるとしてもわかろうとはしないだろういう。要するに、行為の前に結果を知ることを拒んでいる。

 

 

 

良きギャンブラーは一振りのサイコロに全てを賭ける(構造と力・浅田彰

も、その精神の発露であろう。

 

 

 

焼きつくような陽ざしの道を行く時には、誰も美しい花を摘むために立ち止まったりはしない p104

 ・雨道で傘となってくれる人こそ、伴侶にふさわしい。ところで、日傘はどこだ?そいつがあれば、花も摘めるんじゃあないか?

 

我々の世界の2,3の実力者によると、金で手に入るのは人間だけです。思いがいけないことに、金では買うことができないものがいくつもあります...!偶然も金では買収できない。・・・自分のためになる偶然と、ためにならない偶然というものがあります。 p163

 ・営業トーク。人間も金では買えない。人間の行動が金で買えるだけである。

 

ニュシンゲンはまるで自分の両足が邪魔くさいとでもいうように、サロンを歩き回った p192

 ・面白い表現。

奴は小さなことをやるにも大金を振り撒くので、自分で大物だと思っているんです。言葉をさかさまにしてみてください。天才はわずかなもので大きな難問を解くでしょう。 p215

 ・キーエンス最小の資本と人で、最大の付加価値をあげる。〉

ニコラ・テスラ「天才とは、99%の努力を無駄にする、1%のひらめきのことである」〉

・時々、タクシーとか飲食店で「釣りはいらない」という輩がいる。こいつらは間違いなく、投資家でもなければ事業家でもない。1円にも血みどろの結果得られた価値があると知っていれば、到底できる所業ではないから。

 

(パリは)人間は軽んじるが、その人間の金は軽んじない。 p223

 ・割り勘の飲み会で必ず人より多くジョッキ開けようとする奴のことだよ!比例按分にするぞ、たわけ!

 

「結局は『口の堅さ』ですよ!・・・あんたにはそれがある。それからぐっと下るとしても大事なのは『誠実さ』です」・・・(カルロスは)これから長い間の秘密厳守を守らせる保証となるはずの希望を一つ投げた。 p226

 

「年をドった女は、若い女より、危険だよ」 p253

 

「司法」などというものは、たえまなく変わる個人の集団による理念でしかなく、「司法」の良き意図とか記憶力などというものは、それら個人と同じくきわめて変わりやすいものなのだ。 p259



ニュシンゲン男爵のような金持ちは、他の人間以上に大きく金を失うこともあるが、また馬鹿を曝しているような時も、金儲けの機会をつかむ p266 

 ・(経済的な意味における)成功者は運とチャンスを逃さない。

 

金銭しか頭にない人間の頓馬さかげんは誰もが知るところだが、それも結局は相対的なものに過ぎない p290 

 ・損得だけってのがさもしいという感覚を忘却しつつある民が増えてきている気がしますね。街にあふれるキャッチコピーもそんなの多くないですか?得する、儲かるって。もっと夢見させてくれよ(笑)

 

・・・客席がいっぱいのときも、開幕十分前に手に入れようと思えば、ボックス席一つは常に残されていた。・・・このボックス席は、・・・パリのオリンポスの神々の気紛れ目当てに、あらかじめ天引きされる税金みたいなものだった p312 

 ・コレ、今でもよく観察できますよね。最初に考えた人は商売上手。

 

 「30で死ぬ方がいい」・・・「どんな日にも、きれいな女というものは、幕の閉まらないうちに芝居小屋を出るものなのよ!」 p549

 ・30歳超えたら余生みたいなもんよね。

 

感覚の奴隷であるすべての人間の例にもれず、反省はなかなか訪れなかった。詩人と行動的人間の違いがそこにある。一方は、感情に身を委ね、それを生き生きとしたイメージに再現しようとする。彼は事終わってからしか判断できない。それにひきかえ行動的人間は、同時に感じ判断する。 p569

 

司法官たちは軍隊や行政の世界での昇進と同じように、昇進を目的に抜きん出ることを考えている。 p613

 ・瀬木先生の本を読む限り、今の日本も似たようなところがある。

 

 

 

 

(ヴォ―トラン=カルロス=ジャック・コランは)決断することと一瞥を投げかける速度が同じであり、思考することと行動することを一つの稲妻のように走らせて・・・ p643

 ・理想形。行動即ち思考、思考即ち行動。

 

真実といわれるものの不遜さは、芸術に禁じられた仕組みにまではびこることになる。それほどに仕組みは、作家がそれを緩和し、刈り込み、切り落とさない限り、本当らしさを欠くか、それともつつましさを失わせる。 

 

この世の中でいろんな身分になってみたって、ただの外見に過ぎんさ。現実とは頭の中身のことなんだ! p787

 ・認識を通じた現実しか我々の中には存在せず、それが俺たちが言うところの現実なのであり、その現実は、各人事に存在することとなる。

 

どんな女も、愛されているのは自分だけという思いに抵抗することはできない。「あなたにはもうライバルはいないのです!」これが冷たい嘲笑家の最後の文句だった。 p824 

 ・ちょっと笑ってしまった。